「北極星を視い付けたぁ」(前編)

 
最初は一人でボロボロだった僕。
でも、今はたくさんの『トラベラー』が僕の味方。
このまま、残りの皆にも『僕を思い出して』もらいたいな。
さあ、田宮さんを捜そう。今はどこの世界にいるのかな?

僕は『瞳』で他の世界を覗いて回った。すると、不思議な世界を視つけた。真っ白い世界だ。
何だか、「HappyFlowerの世界」で田宮さんが結界を張った時に似ているなあ。ということは、この世界に田宮さんがいる?

その時、頭の中にアマジャステリアの声が響いた。

『シールドが展開され、情報制御が行われているようだ。強行突破を試みるか?』

『よしぃ、やってみてよぉ。』

アマジャステリアの十本の触手が唸りを上げて、スパイラル・ゴッド・ウィップを放つ。白い結界にヒビが入った。

『あれはぁ・・・。』

ヒビ割れから中の世界が微かに視える。そこには『トラベラー』の北村君がいた。向かいにはデュエルディスクを装備したポニーテールの女の子がいる。ヒビ割れから覗いているからか、“観光”(ガイドブック)が発動せず、世界の名前などは分からない。

「ねえ、きたむらー。次は『神様のデュエル』をしようよ。」
「神様の…デュエル…?」
「そ、『デュエルで勝つ』じゃなくて『デュエルをする』ってこと。きたむらーはない?新しいデッキを組んで夜も眠れなかったこと。真夜中までデュエルばっかりしたこと。何十回デュエルしてももう一回デュエルしたいって思ったこと。勝ちも負けも何度も繰り返して、その内勝ち負けなんてどうでもよくなって、デュエルしている時間がずっと続けばいいのにって思って、デュエルすること自体が凄く楽しくて、嬉しくて、特別なことだって思ったことはない?ねえ、きたむらー。デュエルを作った神様は単に皆に楽しんで欲しかっただけだと思うんだ。デュエルを、楽しもうよ!」
「…デュエルを、楽しむ…か。あんたに言われるまで忘れてた感覚だぜ…。だが、オレは「traveler」だ。最強の決闘者になるのがオレの使命、オレの宿命…。勝つことだけが生きる手段だ。オレは、デュエルを楽しんじゃいけねえのさ…。」
「そんなことない!デュエルは人を笑顔にするんだよ!デュエルを楽しんじゃいけないって、そんなの絶対おかしいよ!」
「…!」

『北村君・・・。北村君じゃないかぁ・・・!』

「きたむらーは言ったよね、デュエルに勝つことだけが生きる手段だって。でも、きたむらーはさっきデュエルに負けたけど、今ちゃんと生きてるよ!」
「…!!」

『ええぇ!?もうデュエルしちゃったのぉ!?しかも、負けたぁ!?』

くそっ!もう少し早く視れていたら、北村君も『僕を思い出して』くれていたのに・・・!

「さあ、きたむらー。ディスクを構えて!パルナとデュエルだよ!!」
「わりい。どうやら時間みてえだ。」
「えっ!?」
「オレは田宮と違って強い「traveler」じゃねえ。同じ世界に留まれる時間が決まっているのさ…。」

『くうぅ・・・。再戦ならずかぁ・・・。』

「けれど、オレは「traveler」の前に一人のデュエリストだ!勝負を挑まれて断る道理はねえ!だから、次にこの世界に来るときは、今よりも超絶強いデッキを引っさげてあんたに挑むぜ!約束だ。」
「分かった!約束!」

そうして北村君は次の世界へと旅立っていった。

しかし、残念だ。せっかくの機会だったのに・・・。でも、言っちゃ悪いけど北村君は弱い方の『トラベラー』だったよね。未だに生き残っているんだ・・・。

・・・。よし、決めた。今度は北村君に『僕を思い出して』もらおう。

そうして、僕は『瞳』を使って北村君を追いかけた。



◆ ◆ ◆ ◆



次に北村君が辿り着いたのは「ハッピーフラワーの世界」だった。

視覚えがあるぞ、この世界。藤原君は猛者だ。北村君には荷が重いだろうなあ。
だが、逆に良い。北村君が負ければ、『僕を思い出して』くれるんだからね。で、状況は・・・。あ、もうデュエルが始まってる。しかも結構ターンが経ってる感じだ。で、戦況は・・・?

8ターン目終了
北村賢治 LP3000
手札:なし
モンスター:なし
ペンデュラムゾーン:なし
魔法&罠:永遠の決闘(エターナル・デュエル)Ver.1

藤原賢治 LP800
手札:1枚
モンスター:励輝士ヴェルズビュート(攻1900)
魔法&罠:なし

北村君は手札なし、モンスターなし、魔法&罠はフィールド魔法1枚だけ。そのフィールド魔法の効果はダメージ軽減、か・・・。このままじゃ、一方的に殴られるばかりだ。
ただ、対する藤原君もモンスターは1体だけだし、手札も1枚、ライフは僅かに800ポイント。そして、北村君のターンが始まるようだ。ここで良いカードを引けば北村君が勝つかも!

「オレの、ターン…!ドロー…!オレは、ターンエンド…。」

『えぇ!?何のアクションも行わずターンエンドぉ!?』

手札事故!これ絶対に手札がクソだよ!分かってたことだけど、やっぱり下位の『トラベラー』は引きも悪い・・・。

「ボクのターン、ドロー。ボクは励輝士ヴェルズビュートで攻撃!」
「ぐはっ!」
「ターンエンド。」

もう終わってる・・・。北村君に勝ち目はない・・・。

「オレの、ターン。」

そう僕は思っていた。けれども、それは傲慢だった。彼を侮っていた、ということを僕は思い知らされることになる。

なんと、彼は一筋の光と共にカードをドローしたのだ。まさか、今のはデステニードロー!?

「はっ、はは…。」
「北村君…?」
「ああ…済まねえ…。デュエルを、続ける…。オレはぁ!魔法カード、奇跡召喚(ミラクルサモン)を発動する!」

奇跡召喚(ミラクルサモン)
通常魔法(オリジナルカード)
融合モンスターカードまたはSモンスターカードまたはXモンスターカードによって決められた一組の素材モンスターを自分の手札と墓地から除外して発動する。その融合モンスターまたはSモンスターまたはXモンスターを融合召喚またはS召喚またはX召喚扱いで特殊召喚する。(融合モンスターの場合「融合」は必要としない。Xモンスターの場合、このカードの効果で除外したカードをX素材にする。)

「!!」

『何だってぇ!?』

「この効果によってオレは手札のレベル6のフレイム・ケルベロスと墓地のファイヤー・ウイング・ペガサスでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!飛び立てぇええええ、陽炎獣バジリコックぅうう!!!」

陽炎獣バジリコック
エクシーズ・効果モンスター
ランク6/炎属性/炎族/攻2500/守1800
炎属性レベル6モンスター×2体以上(最大5体まで)
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。相手のフィールド上・墓地のモンスター1体を選択してゲームから除外する。また、このカードが持っているエクシーズ素材の数によって、このカードは以下の効果を得る。
●3つ以上:このカードの攻撃力・守備力は、このカードのエクシーズ素材の数×200ポイントアップする。
●4つ以上:このカードは相手のカードの効果の対象にならない。
●5つ:このカードはカードの効果では破壊されない。

「効果発動!エクシーズ素材を一つ取り除き、あんたの励輝士ヴェルズビュートを除外する!」
「しまった…!これじゃあ…!」
「バトルだぁ!陽炎獣バジリコックでダイレクトアタックぅうううう!!!」
「うわああああっ!!」

藤原賢治LP800→0

『なぁ・・・なあぁ・・・!?』

逆転、した!?北村君が、藤原君相手に!?
・・・凄い・・・。凄いよ、北村君!君は気付いているのかい!?君が為した偉業を!藤原君は、平見さんとのタッグで上位『トラベラー』の田宮さんと互角の勝負を繰り広げたんだよ!?
努力、したんだね・・・。凄まじいぐらい、とてつもなく、僕が想像出来ないぐらい、たくさんの努力を・・・。そんな北村君は『なんて美味しそうなんだ。是非とも食べたい。』

・・・おっと、少しボーッとしていたよ。もう北村君が次の世界に行ってしまった。急いで追い駆けないと。これはもう、是が非でも北村君には『僕を思い出して』もらわないといけないね。むふふ。



◆ ◆ ◆ ◆



北村どこだ、北村どこだ。どうやら、あの世界に入ったようだ。急げ、急げ。急いで追い付け。
・・・あれ?何も視えない・・・。白い壁・・・?また・・・?さっき、無理やり覗いてみたら、田宮さんはいなかったけれど、北村君はいた。で、今度も北村君が入った世界が視えなくなった。ということは北村君が結界を張っているのか・・・?

頭の中にアマジャステリアの声が響いた。

『シールドが展開され、情報制御が行われているようだ。強行突破を試みようか?』

『オッケェ・・・。やっちゃってぇー!』

アマジャステリアの十本の触手が唸りを上げて、スパイラル・ゴッド・ウィップを放つ。ところが、白い壁はまるでゴムのようにグニャーンと伸びて、アマジャステリアの攻撃を受け止めてしまった。十本の触手は勢いを失い、逆に弾き返されてしまった。瞬間、白い壁に文字が浮かんだ。

【警告】【警告】

【警告】【警告】 【警告】【警告】

【警告】【警告】【警告】  【警告】【警告】【警告】

【警告】【警告】【警告】【警告】   【警告】【警告】【警告】【警告】

【警告】【警告】【警告】【警告】【警告】    【警告】【警告】【警告】【警告】【警告】

【警告】【警告】【此以上作業続行】        ⇒  【致命的拒絶反応】【警告】【警告】

【警告】【警告】【警告】【警告】【警告】         【警告】【警告】【警告】【警告】【警告】

【警告】【警告】【警告】【警告】【警告】    【警告】【警告】【警告】【警告】【警告】

【警告】【警告】【警告】【警告】   【警告】【警告】【警告】【警告】

【警告】【警告】【警告】  【警告】【警告】【警告】

【警告】【警告】 【警告】【警告】

【警告】【警告】

気味の悪い光景だった。まるで、僕が視られているかのような錯覚に囚われた。
これ以上、強行突破を試みようものなら、とんでもないことが起こる。そんな予感がした。
僕は静かに『瞳』を閉じた。

『ちょっとぉ・・・北村君を『瞳』で追うのはぁ、しんどいみたいだねぇ。』

さて、どうしたものか・・・。
あ、そうだ。視られてるで一つ思い付いた。僕がどこかの世界や誰かのデュエルを視ているように、他の『トラベラー』も、他の世界や場所を見ている可能性がある。それを上手く利用すれば、白木翼の捜索の手伝いをさせることが出来るかもしれないぞ。
でも、そのためには北村君の件が先だ。北村君がここに来てくれたらいいんだけど・・・。

僕が悩んでいると頭の中にアマジャステリアの声が響いた。

『誘導は可能だ。』

『ええぇ!本当ぅ!?』

『この場所を起点に誘導波を放つ。時間は掛かるが上手く波長が合えば、この世界に来るはずだ。』

『よおしぃ、それをお願いするよぉ。』



◆ ◆ ◆ ◆



アマジャステリアが北村君を誘い込んでいる間に、僕は準備を整えた。『トラベラー』の皆の力を借りてデッキを完成させた。鵜堂君とのデュエルで気が付いた、それぞれの『トラベラー』を表面に持ってくるのも練習した。練習の甲斐あってか、少しの間なら仮面を外しても大丈夫になった。でも、仮面を付けてないとジワリジワリと不安が押し寄せてきて苦しくなる。自分自身がドロドロに溶けて、周りの全てと混ざって消えてしまう錯覚に襲われる。その時はすぐに仮面を付ける。すると、凄く安心出来るし錯覚もなくなる。

さあ、もうすぐだ。もうすぐ北村君がここに来る。そんな気がする。
いつでも来い。デュエルをしよう。『僕を思い出して』もらうために。
僕は、もっと強くならなくちゃいけない。
『彼女』との約束を果たすために。



◆ ◆ ◆ ◆



「ここは…どこだ?」

あはぁ。来た来た。北村君だ。とんがり前髪がトレードマークの『トラベラー』。
いらっしゃい、北村君。そして―――――。

『どこでもないよぉ?ここは僕の世界なんだからぁ。』

―――――僕の世界で、ゆっくりお休み。






「北極星を視い付けたぁ」(後編)






2019.08.01 | 未分類

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