「世界見学ツアー」(前編)

 

僕は死んだ、はずだった。
しかし、僕は死んでいなかった。
金剛さんが身代りになって僕は生き延びた。
そして、僕は再び動き出す。

今度は、失敗しない。
絶対に、失敗なんかしない。
もう誰も失いたくないから。
もう誰も亡くしたくないから。



今の僕は弱い。今後の戦いに備えて僕自身を強化する必要がある。

強くなるために最初に僕が考えたことは、もっとたくさんの『トラベラー』に『僕を思い出して』もらうことだった。剛田君も金剛さんも『僕を思い出した』ことで、僕に力を貸してくれるようになった。だったら、他の『トラベラー』にも『僕を思い出して』もらえば、更なるパワーアップが出来るはずだ。
じゃあ、『僕を思い出して』もらえる条件とは何だろうか?

剛田君、金剛さんの共通点は『トラベラー』であること。そして、二人共がデュエルで負けている。僕自身がデュエルで負かした金剛さんはもちろんのこと、北村君と戦って負けた剛田君も条件を満たした。
一方で、デュエルに負けた『トラベラー』というのが条件の全てならば、もっとたくさんの『トラベラー』が『僕を思い出して』いるはずなので、きっとまだ他の条件もあるに違いない。他の共通点として考えられるのは、僕自身が近くにいて相手を認識していたこと、かな。

だから僕は、『トラベラー』がデュエルで負けた時、その様子を観測しているならば『僕を思い出して』くれる、という仮説を立てた。



そして僕は「まだどこでもない場所」から観測を始めた。どこかの世界でデュエルをしている『トラベラー』がいないかどうか探した。上手くいけば、負けた『トラベラー』の力を得られる。それを繰り返せば僕は強くなれるって考えた。

そして僕は、かつて僕達『トラベラー』が居た最初の世界に『瞳』を向けた。


『あれはぁ・・・。』

そこには二つの人影があった。一つは『トラベラー』の高尾(たかお)君。実力は『トラベラー』の中では低い方だったかなあ。もう一つは、確実に上位に位置するであろう『トラベラー』、田宮(たみや)。二人は丁度、デュエルの最中だった。

「次で終わりだな。田宮」
「ならば最後に1つ聞いておこう。お前は2つの世界で何を見た?」
「何を見た、だと?俺は世界から力を得たに過ぎない」

どうやら、もうすぐデュエルが終わるようだ。僕にとっては好都合な場面だ。僕の仮説が正しいかどうかが分かるチャンスだ。でも、観測だけで本当にいいんだろうか。同じ世界にいるのも条件の一つだとしたら、みすみす貴重なチャンスを逃すことになる。僕は最初の世界に行こうとも考えた。

でも、僕の脳裏に鵜堂の一件が過ぎって足が竦んだ。もし、ノコノコと出て行って田宮が僕を殺しにかかってきたら、と思うと行くに行けなかった。そうこうしている内にデュエルは進んでいった。

「これは私からの香典だ。心よりご冥福をお祈りしてやる」
「ひっ……ひぃっっ……!」
高尾【LP:0】

『あっ・・・。』

僕が迷っている間にデュエルは決着した。田宮の完全勝利だった。

【現在、バイオメタル・カプセル内のエネルギーは不足していません。
それでも食事を行いますか?】

◆ ◆ ◆ ◆

『・・・あれぇ?』

ふと、僕は目の前に何かが落ちているのに気が付いた。僕はゆっくりと黒い手を伸ばして、それを拾い上げた。

『これはぁ・・・。高尾山名物の天狗焼ぃ・・・?何でぇ、ここにぃ・・・?まあ、いいかぁ・・・。ちょうど、小腹も空いてたことだしぃ・・・。いただきますぅ。』

◆ ◆ ◆ ◆

ハッと、僕は気が付いた。どうやら、お腹が空いていたために天狗焼を食べる妄想に浸っていたようだ。

『あぁ・・・。あ、あれぇ?二人は、どこに行ったのぉ・・・?』

僕がボーっとしている間に二人とも旅立ったのかなあ・・・。あれ・・・?僕の中に高尾君が存在している・・・?分かる・・・。分かるぞ、高尾君のことが・・・!強さを得るために強いと思う世界を巡ったこと、高見沢(たかみざわ)と会話したこと、世界から素晴らしい能力を手に入れて興奮してたこと、全部分かる!

『・・・!高尾君・・・!君も『僕を思い出して』くれたんだねぇ?』

僕は白い仮面の下でニンマリと笑った。

『ありがとうぅ、ありがとう高尾君!そしてぇ・・・おめでとうぅ。僕という新たな神の一部になる栄誉を君は得られたんだよぉ。』



◆ ◆ ◆ ◆



高尾君は『僕を思い出して』くれた。でも、田宮はまだだ。田宮はどこだろう。どこへ行ったんだろう。捜さなきゃ。また田宮が僕のためにデュエルしてくれるかもしれないからね。

ああ、いたいた。視付けた視付けた。「HappyFlowerの世界」に行っていたんだ。田宮以外に二つの人影が視える。「HappyFlowerの世界」の主人公、藤原(ふじわら)君と平見(ひらみ)さんだ。

「お前達2人でかかって来い。バトルロイヤル形式ではない。2対1だ。ライフポイントも2倍、モンスター・魔法・罠カードゾーンも2倍、手札・デッキ・墓地も共用でいい」
「そんなことをしたら……」
「そんなことをしたら、なんだ?」
「……賢治くんと私の合計で、手札10枚からのスタート、ドローフェイズには実質2枚のドローできることになります」
「まだハンデが足りないのか。お前達を甘く見ない程度に抑えたつもりだったんだがな」
「ユキちゃん。今回はちょっと自信がないかも」
「うん、わたしも。だけど……」
「戦うしかないか。その条件で構いません、田宮さん」
「ならば始めるか」

田宮がパチンと指を鳴らすと、視界が白い空間へと変わっていく。

『えええぇ!?』

そして、三人の姿は完全に視えなくなった。

『そ、そんなぁ・・・。』


白く濁った視界を視続けるのは暇な作業だったけど、命の危険があるよりはよっぽどいい。しばらく観測を続けていると白く濁った視界が晴れて、三人の姿が再び視えるようになった。だが、既にデュエルは終わっていた。

「田宮さん……!もう行っちゃうんですか?」
「私はこれからも世界を見る。私が別世界の力を得て最強の存在となったとき、自分が何を思っているのかを知りたい。お前たちのせいで、そういう気分になった」
「田宮さん。どんな道を選んでも、幸せになって下さい。ボク達からの約束です」
「……考えておいてやる」

『くそうぅ!もう勝負が着いているじゃないかぁ!どっちだぁ!?結局どっちが勝ったんだよぉ!』

僕は悔しくて、その場で跳び跳ねた。
でも、そうやって跳ねていると時間が経って、冷静になれた。

『・・・まあ田宮が勝ったかなぁ・・・。すると負けたのは藤原君と平見さんだけれどもぉ、『トラベラー』じゃない藤原君と平見さんじゃぁ、そもそも『僕を思い出す』ことは出来ないよなぁ・・・。』

・・・。

けれども、藤原君も平見さんも笑っていた。あれが敗者の笑顔かな?確かに、勝負に負けてもヘラヘラしている奴はいるよ。

けれども、藤原君も平見さんも、とても眩しく笑っていた。少なくとも、負けた者がするような顔じゃなかった。じゃあ・・・勝った、のか?あの『トラベラー』の上位に位置する田宮相手に・・・!?馬鹿な、有り得ない・・・。

けれども、藤原君も幸恵さんも笑顔だった。じゃあ、まさか本当に勝ったのか?あのデュエル怪物の田宮に!・・・いや、もし田宮がデュエルに負けたのなら、田宮が生きているはずがない。やっぱり、田宮が勝ったんだ。そうだ、そうに違いない・・・。

けれども、藤原君も幸恵さんも笑っていた。僕の頭から、その笑顔が離れない。田宮が負けているはずがないけど、藤原君と幸恵さんも負けてはいない・・・?
あ・・・引き分け?そうか、引き分けたんだ!なるほど、そういうことか・・・。

視たかったなあ、デュエル・・・。きっと名勝負だったに違いない。いずれ田宮とは戦わなければならないから、その参考になっただろうに・・・。けど、もう視れないデュエルに拘ってる訳にもいかないよね。

『さあぁ、気を取り直して次に行こうぅ。田宮はどこに行ったかなぁ?』

僕は「HappyFlowerの世界」の外に『瞳』を向けて、田宮の姿を捜し始めた。



◆ ◆ ◆ ◆



さて、田宮はどこかな・・・。あ、いたぞ。「佐久間闇子の世界」にいるぞ。どうやら、ここでも2対1のデュエルをしているみたいだ。さっきみたいに結界が張ってない、ラッキー。田宮と戦っているのは、医者の八武(やぶ)先生と・・・須々木(すずき)君!『トラベラー』の須々木君じゃないか!デュエルはもう終盤か・・・。

「ドクターに攻撃! ここで八武を女性に変える。」
「予想は付いてたが、やめろおおおおおおおおおおおおおお!!!」

まばゆい光が八武先生を包んだかと思った瞬間、攻撃力7300の《エンシェント・クリムゾン・エイプ》が突撃していく。八武先生のデュエルは光の中に完結したのだ。

八武(♀) 「ア゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」(LP5100→0)

酷い・・・。酷いという言葉しか出て来ない。これが『トラベラー』上位のデュエルなの・・・?今の僕には理解出来ない・・・。待てよ、これがタッグデュエルならば、まだタッグパートナーの須々木君が残っている!ならばワンチャンあるぞ!

「1ターンキル・・・だと・・・! こうなっちゃあ、おれっちだけで戦うしかない!」

頑張れ、須々木君!こんなデュエル、間違っていることを証明してやれ!

「残念だが、お前に次のターンは無い。魔法カード《闇からの奇襲》だ。」
「それは、闇マリクの使っていたカード!」
「この効果で、《エンシェント・クリムゾン・エイプ》は、もう一度バトルフェイズを行う。そして最後の手札、速攻魔法《突進》だ。」
「うあ・・・・そんな・・・・おれっちが・・・・ここで終わる・・・・?」
「せめて最後に女にしてやろう。私からのはなむけだ。」
須々木(♀) 「オオ゛ーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」(LP8000→0)

・・・。
はい、皆さん、ご一緒に。
『やめろぉー!こんなのデュエルじゃないぃ!』

・・・。
いや・・・。
逆に、これこそが真のデュエル、なのか・・・?逆に・・・。
僕のデュエリストレベルが足りないから、僕の理解力が足りないからデュエルに見えないだけなのか・・・?
あ、それよりも、須々木君は・・・。

【現在、バイオメタル・カプセル内のエネルギーは不足していません。
それでも本当に食事を行いますか?】

◆ ◆ ◆ ◆

『・・・あれぇ?』

ふと、僕は良い匂いが漂っているのに気が付いた。目の前に何かが落ちているようだ。これは・・・スズキのフライ・・・?何で、ここに?・・・ま、いっか。僕、魚も好きなんだよね。

『いただきますぅ。』

うん、いけるね。スズキは刺身やムニエルもいいけれど、フライもまた格別だね。

◆ ◆ ◆ ◆

『あれぇ?』

僕が気が付いた時には、田宮はいなかった。もう次の世界に行ったようだ。僕は、また食べ物を食べる妄想に浸っていたみたいだ。いけない、いけない。僕、そんなにお腹が空いているかなあ・・・。

『ん・・・?』

その時、僕は急に須々木君のことが「分かった」。単に思い出したなんて話じゃない。もっと深いレベルで須々木君のことを理解したんだ。今まで須々木君が何をしていたのか、どんな頑張りをしていたのか、上位『トラベラー』の輪島(わじま)とデュエルをして友情を育んだこと、マッシュルームカットになれる能力を手に入れて一つの世界を救ったこと、リーゼントになれる能力を手に入れて敗北したこと、全て理解した。

『やったぁ!須々木君も『僕を思い出して』くれたよぉ!ありがとう須々木君!そしてぇ、おめでとう須々木君!君も僕達と、いつまでも一緒だよぉ!』



◆ ◆ ◆ ◆



田宮はどこだ?田宮はどこだ?田宮は一体、どこ行った?
いたよ、いたいた。「城之内克也 怒りの決闘の世界」だ。



「どけ!!」


うわあ!ビックリしたあ!田宮が叫んだのと同時ぐらいにE・HERO プリズマーが飛び出して知らない男を蹴り飛ばした。え?ソリットヴィジョンだよね?この世界ってソリットヴィジョンに質量あったっけ?

「うわあああ!」
「……ふん。くだらん世界だ」

蹴られて倒れている、あの男はシーダー・ミール君というのか・・・。“観光”(ガイドブック)は本当に便利だよなあ。
・・・。待てよ。今、シーダー君はデュエルで負けた、よね?じゃあ、ひょっとして『僕を思い出して』くれ―――――る訳ないか。だって、シーダー君は『トラベラー』じゃない。だから、最初から僕を知っている訳じゃない。つまり、『僕を思い出せ』ない。実際、さっきからずっと視ているのに、高尾君や須々木君のようなことが起こらない。やっぱり、『トラベラー』以外は無理なんだと思う。
おっと、それよりも急がないと田宮を視失ってしまう!田宮はどこだ?次は、どこの世界に行ったんだ?



◆ ◆ ◆ ◆



さあ、次だ。次々。田宮はどこだ?お、「血の刻印の世界」に入っていくぞ。
・・・。あれ?いないぞ?どうなってる?確かに田宮はこの世界に入ったはずなのに・・・。まさか、もう次の世界に行ったとか!?とにかく捜すしかない!
あ・・・。あれは、ラーメン屋さん・・・?どうしてだろう。何故か視覚えがある。“観光”(ガイドブック)で知ったのかな・・・?いや、違う。僕は、少なくとも一度、この世界を訪れている・・・。

その時、僕は思い出した。ここで、第一位と戦ったことを。

あたしの先攻で行くよ!ドロー!フィールド魔法、トゥーン・キングダムを発動する!」

トゥーン・キングダム
フィールド魔法
(1):このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキの上からカード3枚を裏側表示で除外する。
(2):このカードのカード名は、フィールドゾーンに存在する限り「トゥーン・ワールド」として扱う。
(3):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分フィールドのトゥーンモンスターは相手の効果の対象にならない。
(4):自分フィールドのトゥーンモンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりに破壊されるモンスター1体につき1枚、自分のデッキの上からカードを裏側表示で除外できる。

ただし、僕と第一位が戦ったんじゃない。倉橋さんと第一位が戦ったんだ。

前にアマジャステリアとの問答の中で第一位と戦ったことを思い出した時、何か変な気がしていた。それは当然だ。戦っていたのは僕じゃなく倉橋さんだったんだ。そして、僕はそれを傍で見ていたに違いない。きっと、第一位とのデュエルで倉橋さんは負けて殺されたんだろう。そして、『僕を思い出した』に違いない。そう、僕は第一位に殺された倉橋さんの記憶を鮮明に受け継いだんだ。そして、第一位はそのまま僕を殺そうと迫ってきたのだろう。だから、僕は逃げ出した。それが僕の逃亡生活の始まりだったんだ。

『うん・・・。間違いないよぉ・・・。僕の中に倉橋さんもいるよぉ・・・。』

ごめんね倉橋さん、思い出すのが遅くなって・・・。本当に僕は忘れん坊だなあ・・・。



◆ ◆ ◆ ◆



倉橋さんを思い出せたのはよかった。けれども、田宮を完全に視失ってしまった・・・。一体、どこに行ったんだろう・・・。もう、諦めた方がいいのかな?無数に存在する世界の中から、一度視失った田宮を捜し出すのは、砂漠の中に落とした一欠片の塩粒を見付け出すよりも難しい。それこそ、偶然か奇跡でも起きない限り無理だ。田宮のことは諦めて、普通に世界を視て回ろう。僕が強くなるヒントが他にもあるかもしれないし、他の『トラベラー』が視付かるかもしれない。
さて、気を取り直して適当にどこかの世界でも覗くか。えっと・・・この世界は「解放されし記憶の世界」か・・・。
あれ?あれに視えるは田宮じゃないか!『トラベラー』の山代(やましろ)さんも一緒だ!何という偶然!ありがとう神様!ん・・・?神様は僕か。じゃあ、ありがとう僕!
・・・どうやら二人はデュエルしているようだ。

「私がどこの世界に向かうのか、私自身も知らん。大体、デュエルを仕掛けてきたのはそちらだろう」
「なによ! 余裕よね、強い「traveler」サマは! 弱い「traveler」が向かって来ても、余裕で返り打ちってこと!? これだから、強い奴は、人の気持ちがわからないんだわ……弱くても、必死に頑張ってる人の気持ちが!!」

戦況は田宮の遊星・・・じゃなくて優勢。ライフも手札もフィールドも全てが田宮優勢。でも、まだチャンスはある。まだ山代さんのターンだから。でも、田宮相手だから手札1枚で巻き返すのは難しいと言わざるを得ない。ただ、最後まで勝負の行方が分からないのがデュエルだ。だから・・・。
・・・。
・・・。・・・。
・・・・・・・・・。
・・・それよりも何だか、お腹が空いたなあ・・・。山盛りのシロップかき氷が食べたいなあ・・・。

「死ね」
「!? 死ぬのは嫌だって言ったじゃないいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!」
山代【LP:100→LP:0】

『あぁ・・・。決着かぁ・・・。』
それよりも、お腹が空いたなあ・・・。あ、いや、それよりも山代さんは・・・。
・・・そんなことよりお腹が空いたなあ・・・。
・・・。
・・・そんなこと?いやいや。重要だから。山代さんの生死は超重要だから。
・・・。
でも、お腹が空くなあ・・・。どうして、お腹が空くんだろう・・・?

【現在、バイオメタル・カプセル内のエネルギーは不足していません。
それでも本当に食事を行ってしまいますか?】

◆ ◆ ◆ ◆

『・・・おやぁ?』
僕の目の前に何かあるよ。ひんやりとした気配。これは、かき氷だ。やったー!

『いただきますぅ~。』

うん!おいしい~!ホッペが落ちるぐらい美味しいよお~。やっぱり、かき氷と言えば赤の苺味が定番だよね。食べ過ぎると舌が真っ赤になっちゃうんだよね。てへぺろ。

◆ ◆ ◆ ◆

『あっ・・・!』

僕は何をしていたんだろう?何だかぼんやりしていたような・・・。いけないいけない!しっかりしろ、僕!そうだ、山代さんのデュエル、どうなった!?

『・・・田宮がいないぃ・・・。』

もう、デュエルは終わったのか・・・。
と、思った瞬間だった。僕は山代さんの気持ちを深い部分で「理解」した。

『あ、ああっ・・・!』

悔しい。悔しい。悔しい!悔しくて悔しくて、叫びたくなる!自分の力に振り回されて悔しい!自分の能力をコントロール出来なくて悔しい!もっと強くて扱いやすい能力を得られないのが悔しい!
何より自分が弱いのが、悔しい。だから、誰かのせいにしたくなる。世界のせいにしたくなる。能力のせいにしたくなる。他人のせいにしたくなる。でも、本当は分かってる。結局は自分が弱いから。それが全ての原因。だから、悔しい。こんな非力な状態で生まれたことが悔しい。・・・不幸だ。
・・・。
・・・。・・・。
山代さんはちゃんと『僕を思い出して』くれていた。ごめんよ、山代さん。君の戦いをちゃんと視てあげられなくて・・・。しっかりしろ、僕!お腹が空くのが何だ!『トラベラー』は食事をしなくても死にはしない!それよりも、もっと大切なことがあるだろう!

僕は自分自身に気合いを入れ直して、どこか別の世界へ旅立った田宮の姿を捜し始めた。



◆ ◆ ◆ ◆



田宮を捜せ。田宮を捜せ。田宮行方を視逃すな。いたぞ、あそこだ。「黒翼の散る果て――――」
その時、僕の『瞳』に映ったのは強烈な砂嵐だった。

『ぎゃおおおおおおおぉ!!』

僕は思わず叫んでしまった。『瞳』を瞑り、転がって、何度も目を擦った。でも、慌ててたもんだから白い仮面の上から擦ってた。これじゃ、意味ないよ・・・。
少し時間が経って、いつもの冷静さを取り戻した僕は再び田宮を捜そうとした。しかし、砂嵐が酷過ぎて田宮が視えない。何て運が悪いんだ・・・。まるで世界に拒まれているかのような不運を感じつつ、僕は一度『瞳』を閉じた。
落ち着くんだ、僕。僕は一度、田宮を視失った。けれども、再び田宮を発見した。あの時は偶然だと思ったけれど、偶然ではなかったとしたら?
というのも、偶然で片付けるには確率が低過ぎるんだ。つまり、僕が新しい能力に目覚めたか、『瞳』に付いていた機能かで、田宮を追うことが可能なんじゃないか?そう、心眼を開くんだ。まずは、座禅からだ。心を落ち着けて精神統一だ。そうすれば視えてくるはずだ。田宮の行方が。



数時間後の話だ。結論から言おう。よく分からん!結局、心眼を開けた気がしない!
くそっ!時間の無駄だった!何やってんだよ、僕は・・・。
しょうがないので、僕は適当に世界を視て行こうと思った。



◆ ◆ ◆ ◆



どうら、この世界は・・・?お、ここは「決闘都市の世界」か。
ん・・・?んん・・・?あれは、田宮に高見沢に佐藤(さとう)!?ちょ、ちょっと待って!何で上位『トラベラー』が三人も集結しているんだ!?しかも、筋肉マッチョで黒いセーラー服を着たアフロの巨人と全身タイツの黄色いマントの男が対決している!?誰か!誰か僕に状況説明をお願いします!

「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「やったよ田宮さん!タスヤフゴが闇に消えていく!」
「・・・・・・。」

・・・・・・酷い!酷過ぎる・・・!「佐久間闇子の世界」でのデュエルも酷かったけれども、これはもうデュエルですらない!・・・いや、でも、上位『トラベラー』である三人が集まってるってことは、これがデュエルの究極進化系なの・・・?嫌だ!嫌過ぎる!

『こんなのデュエルじゃないぃ!』

・・・そう言えば、あの筋肉マッチョのアフロ、何だか見覚えが・・・。須々木君・・・?いや、まさか、ね・・・。

【現在、バイオメタル・カプセル内のエネルギーは不足していません。
これ以上の食事は異常行為です。
それでも食事を行ってしまいますか?】

◆ ◆ ◆ ◆

『・・・あれぇ?』
僕の目の前から良い匂いがするよ。これは、フォアグラじゃないか!世界三大珍味のフォアグラ!残虐だってことで生産禁止になった世界もあるんだよね。でも、目の前にあるんだったら食べない訳にはいかないよね。それじゃあ、命に感謝して。

『いただきますぅ~。』

◆ ◆ ◆ ◆

『あれぇ・・・?』
僕の中に不破(ふわ)君と五条(ごじょう)さんがいる・・・!?まさか、さっきの筋肉マッチョの筋肉部分は不破君でセーラー服部分が五条さんだったの!?そうか、二人は恋人同士・・・。『トラベラー』の上位達に囲まれて、死ぬ前に二人は融合したんだ。愛した者と共に死ぬ・・・これが究極の愛・・・。

不破君、五条さん・・・。結婚おめでとう!末永く、お幸せに!





倉橋さんが『僕を思い出して』くれた。
剛田君が『僕を思い出して』くれた。
高尾君が『僕を思い出して』くれた。
須々木君が『僕を思い出して』くれた。
山代さんが『僕を思い出して』くれた。
不破君が『僕を思い出して』くれた。
五条さんが『僕を思い出して』くれた。

僕はどんどん強くなる。だって、皆が僕に力を貸してくれているんだから。さあ、次だ。田宮は『お腹、空いたぁ。』次にどこに行く?次はどの世界に『何か食べたいなぁ。』行くんだい?そして、誰と出会うんだい?もっと、僕を強くして『熱々のステーキがいいなぁ。』おくれ。



次は『誰を食べようかなぁ?』



◆ ◆ ◆ ◆





















【警告します。現在、バイオメタル・カプセル内のエネルギーは不足していません。】

【警告します。これ以上の食事は異常行為です。】

【警告します。これ以上の食事を行う前に精密検査を受けることを推奨します。】

【警告します。このままでは取り返しの付かない事態になる可能性があります。】

【この警告を聞いた後、すぐに白木司の元へ向かうことを強く推奨します。】






「世界見学ツアー」(中編)





2019.07.05 | コメント(2) | 未分類

コメント

異界発『グルメ』ツアー

 
須々木、不破五条は元から食べ物由来ですが、高尾さん→天狗焼きの良センス。
そして山代さんは、山盛りシロップ・・・w

『死神』が本当に美味しそうに食べるので、より増す残酷さ。
食べられる側のセリフが無いことで、かえってサイコパス感が上昇中?
エマージェンシーも良い感じに不穏さを加速してくれます。


というわけで本編に合流、キャビア、もとい田宮さんのストーキング開始!
世界の合間を縫って鮫のように追いかけるよ!
基本シリアスな話なのに、ぶっ込まれる3話と4話の異物感・・・w
死神『ん?骨が刺さったかな?』

本編をダイジェストで振り返り、早くも11話まで。
9話で羽黒さんを吸収できなかった理由も、なるほど納得w
しにがみの めに すなが はいった!
死神『みんなもマヌーサ(物理)には気を付けようねぇ~』


2019-11-20 水 00:01:53 | URL | アッキー [ 編集 ]

真の食通だけが参加出来るツアーです

源さんがトラベラーを動物に例えるように、トラベラーを食べ物に例えてみました。食べ物由来の人もいるし、楽しい作業でした。『死神』は記憶の欠損で倫理観の一部も欠けているために、独自の世界観で動いています。まあ、我々が肉を食べる時に「牛や豚や鶏を殺して食っているんだ」ということを強く意識しながら食べることは多くないのと似ているのかもしれません。
ただし、本来はトラベラーは食事の必要はないし、『球体』を手に入れたことで『死神』のエネルギー不足は解消されています。剛田君だけは緊急措置として吸収しましたが、それ以降の吸収はまさしく異常行為。しかし、『死神』に警告は届いていない様子・・・。

第6話にして本編に合流。時間的には第一話以前の方がとても長いですが死人が急増したのは、この頃から。
(田宮さんが動き出してから死人が急増したなどと言ってはいけない。)
狩りをする肉食獣の食べ残しを漁るかのようにして、『死神』は急成長を遂げました。下位トラベラーであっても、これだけ人数が揃えば・・・。

条件さえ整えば羽黒さんも食べられていたと思われますが、世界がそれを許しませんでした。あの世界を救おうと長き時間を過ごした羽黒さんを、世界が守ったのかもしれません。

2019-11-21 木 00:53:31 | URL | 千花白龍 [ 編集 ]

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