traveler金剛の停滞

 
◆ ◆ ◆



 私は、果てなき白い闇を見た。

 穿たれる、歪んだ黒い光を見た。

 更なる深淵に、無限の極彩色を見た。

 故に、私は……



◆ ◆ ◆



 暗闇の中、1人の女が座して佇んでいた。
 法衣を纏い、背をまっすぐ伸ばして座する彼女は微動だにしない。
 一片の音すらないその静謐の場に、突如としてミシリ、と木が軋む音が響いた。

 女は静かに立ち上がり、自らが背としていた方向に向きを変える。
 音の出所は彼女が振り向いた先、この仏堂の扉だ。
 何者かが体を押し付けるようにして、扉を壊し侵入しようとしているのだろう。

 だが、彼女は狼狽える様子を見せない。
 
 扉が壊され、堂の中に光が差しこむ。
 そして、侵入者の姿が明らかになる。
 
『■■■■■、■■■■■』

 それは、黒い塊、としか形容しようのないモノだった。
 声ともつかぬ声を発し、体のような膨らんだ部分を引きずりながらずるずると前進している。

 それに相対する女――尼僧の姿のtraveler、金剛(こんごう)は、その姿を捉えてはいない。
 正確には、自らに迫るモノが存在することはわかっているが、見えてはいないのだ。
 その目元は、黒い包帯で覆われている。

 金剛は、生まれた時から視力がなかった。
 travelerの中には、他にも幾つもの病気を抱えたまま生まれた者もいる。
 そして、それは正確には疾患ではなく生態、言うなれば個人に課せられた個別のルールなのだ――ある人物にそう言われた事を、彼女は思い出していた。
 
「貴方は……その有様は……」

 ゆっくりと、金剛は口を開く。
 ぼそぼそとした喋りだ。唇がうまく動いていない。

 ゆるゆると発せれられた金剛の問いに応えることなく、黒の塊は腕を伸ばす。
 そこに、デュエルディスクが形成された。デュエルを挑むつもりなのだ。
 
 それを金剛は感じ取った(・・・・・)
 
「…………なるほど、伊良湖、か」

 何やら納得したようにそう言うと、金剛は右手を高く掲げる。
 すると、周囲が“力場”に包まれた。
 彼女の持つ結界の力で、決闘の場として準備が整えられた。

「……決闘の前に、このワールドカードを発動する。《肆万由旬の果てVer.2》を」

《肆万由旬の果てVer.2》 フィールド魔法・ワールドカード
0.デュエル開始直前にデッキのこのカードを相手に見せることで、
このカードを発動した状態でデュエルが始まる。
この効果を使用した場合、自分はデッキ変更できず、
このカードはフィールドを離れず、効果を無効にできない。
このカードは他のフィールドカードと共存する。
1.各プレイヤーは自分のターンのスタンバイフェイズ開始時、
デッキの1番上からカードを1枚墓地に送ることで発動できる。
それがモンスター以外のカードだった場合、
デッキからカードを1枚ドローする。
2.デュエル中に1度、バトルフェイズ時以外でプレイヤーが
デュエルの勝利条件を満たした場合に適用される。
そのプレイヤーは勝利が確定する前に8000ダメージを受ける。


 そして、デュエルが始まった。

金剛【LP:8000】
『■■』【LP:8000】


「私のターン、《肆万由旬の果てVer.2》の1の効果を使用」

墓地に送られたカード:魔法カード《おろかな副葬》


「モンスター以外のカードなので、1枚ドロー」

 金剛には、見えずともわかる。
 墓地に送られたカードも、今引いたカードも。
 まるで盲目とは感じられないほど、手早く手札のカードを選び取る。

「《流星方界器デューザ》召喚、その効果で《方界業》を墓地へ送る」

《流星方界器デューザ》 [光] レベル4
機械族/効果 ATK1600/DEF1600
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「方界」カード1枚を墓地へ送る。
(2):1ターンに1度、このカードが表側表示で存在する状態で、
モンスターが自分の墓地へ送られたターンに発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時まで、
自分の墓地のモンスターの種類×200アップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。


《方界業》 永続魔法
(1):このカードの発動時に、「方界胤ヴィジャム」以外の
自分フィールドの「方界」モンスター1体を対象にできる。
その場合、手札・デッキから「方界胤ヴィジャム」を任意の枚数墓地へ送る。
その後、対象のモンスターの攻撃力は、
この効果で墓地へ送ったモンスターの数×800アップする。
(2):相手ターンに「方界」モンスターの効果で
「方界胤ヴィジャム」が特殊召喚された場合に発動する。
このカードを墓地へ送り、相手のLPを半分にする。
(3):墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「方界」モンスター1体を手札に加える。


 金剛は、盲目であることを補うかのように周囲の状況を感覚的に捉えることが出来た。デュエルの内容も同様だ。
 これも自らの生態なのか、いつの間にか手に入れていた能力なのか、もはや自分でも判別がつかなかった。

「そして墓地へ送った《方界業》を除外し、デッキから《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》を手札に。カードを3枚伏せて、ターン終了」

金剛【LP:8000】  手札:3枚
【モンスター】流星方界器デューザ(ATK1600)
【魔法&罠】-
【フィールド】肆万由旬の果てVer.2

『■■』【LP:8000】  手札:5枚
【モンスター】-
【魔法&罠】-


『■■■■■、■■■!』

 相対する黒塊がカードを引く。
 続けて、ワールドカードの効果を使用した。

 墓地に送られたのはモンスターカード、追加のドローはない。
 それを気にしているのかいないのか、それすらわからない様相で、黒塊はカードを発動させた。

《光の援軍》 通常魔法
(1):自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って発動できる。
デッキからレベル4以下の「ライトロード」モンスター1体を手札に加える。


墓地に送られたカード:《ライトロード・マジシャン ライラ》《クリアクリボー》《神聖なる魂》


《ライトロード・アサシン ライデン》 [光] レベル4
戦士族/チューナー/効果 ATK1700/DEF1000
「ライトロード・アサシン ライデン」の(1)の効果は
1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズに発動できる。
自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。
この効果で墓地へ送ったカードの中に「ライトロード」モンスターがあった場合、
このカードの攻撃力は相手ターン終了時まで200アップする。
(2):自分エンドフェイズに発動する。
自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。


 手札に加えた光の暗殺者を、黒塊はそのまま呼び出す。
 その効果で、さらに墓地にカードが送られる。
 ターンの初めに墓地に送られた《グローアップ・バルブ》も、デッキトップのカードを1枚墓地に送り、自身の効果で蘇った。

《グローアップ・バルブ》 [地] レベル1
植物族/チューナー/効果 ATK100/DEF100
このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地に存在する場合に発動できる。
自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送り、
このカードを特殊召喚する。


墓地へ送られたカード:《光竜星-リフン》《ライトレイ・ソーサラー》《スター・チェンジャー》


『■■■■■、■■■!』

 並べられた小型のモンスター達の後ろで、黒の塊は手札に指を掛ける。
 ここからが本番だ、と言わんばかりに、光を纏った巨大な海竜を場に呼び出した。

《ライトレイ ダイダロス》 [光] レベル7
海竜族/特殊召喚/効果 ATK2600/DEF1500
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性モンスターが4体以上の場合のみ特殊召喚できる。
1ターンに1度、フィールド上のカード2枚と
フィールド魔法カード1枚の合計3枚を選択して発動できる。
選択したカードを破壊する。


『■■■■■、■■■!』

 黒い塊の声なき声に応えるように、金剛の場のワールドカードと伏せカード2枚が光に包まれる。
 《ライトレイ ダイダロス》の持つ破壊効果……金剛はそれに瞬時に反応し、伏せカードの1枚を開いた。

「《方界縁起》を発動。ダイダロスに方界カウンターを載せ、効果と攻撃を封印」

《方界縁起》 通常罠
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「方界」モンスターの数まで、
相手フィールドの表側表示モンスターに方界カウンターを置く。
方界カウンターが置かれたモンスターは攻撃できず、効果は無効化される。
(2):墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「方界」モンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスターが戦闘で方界カウンターが
置かれているモンスターを破壊する度に、その破壊されたモンスターの
元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。


 金剛の罠により、光の海竜はみるみるその活力を失い、体色は虚ろな灰色となった。
 それを見るやいなや、黒塊は虚ろとなったダイダロスを《グローアップ・バルブ》と共にシンクロ召喚の素材とした。

《ゼラの天使》 [光] レベル8
天使族/シンクロ/効果 ATK2800/DEF2300
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「ゼラの天使」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの攻撃力は除外されている
相手のカードの数×100アップする。
(2):このカードが除外された場合、
次のターンのスタンバイフェイズに発動する。
除外されているこのカードを特殊召喚する。


 降り立ったのは、大型の天使。
 続けて、それと同等の攻撃力を持つ光の竜魔王がフィールドに降り立ち、金剛の残った伏せカードを狙う。

《ライトレイ ディアボロス》 [光] レベル7
ドラゴン族/特殊召喚/効果 ATK2800/DEF1000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性モンスターが5種類以上の場合に特殊召喚できる。
1ターンに1度、自分の墓地の光属性モンスター1体を
ゲームから除外して発動できる。
相手フィールド上にセットされたカード1枚を選択して確認し、
持ち主のデッキの一番上または一番下に戻す。


「除去対象となった伏せカードを発動、《針虫の巣窟》」

《針虫の巣窟》 通常罠
(1):自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。


墓地に送られたカード:《方界法》《方界降世》《方界帝ゲイラ・ガイル》《召喚僧サモンプリースト》《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》


 伏せカードの除去は結果的に空を切ったワケだが、黒の塊は気にも留めない。
 手札から後続を呼び出す。またしても大型、高レベルの戦士だ。

《ライトレイ ギア・フリード》 [光] レベル8
戦士族/特殊召喚/効果 ATK2800/DEF2200
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性モンスターが5種類以上の場合のみ特殊召喚できる。
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが戦士族のみの場合、
自分の墓地の戦士族モンスター1体をゲームから除外する事で、
魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。


 かくして黒の塊の場には、4体もの光の軍勢が揃うことになった。
 黒の塊は、震える指で金剛を指さし、自軍に攻撃命令を下す。

『■■■■■、■■■!』

「《マジカルシルクハット》発動。デューザと《方界業》2枚を壁とする」

《マジカルシルクハット》 通常罠
(1):相手バトルフェイズに発動できる。
デッキから魔法・罠カード2枚を選び、
そのカード2枚を通常モンスターカード扱い(攻/守0)として、
自分のメインモンスターゾーンのモンスター1体と合わせて
シャッフルして裏側守備表示でセットする。
この効果でデッキから特殊召喚したカードはバトルフェイズの間しか存在できず、
バトルフェイズ終了時に破壊される。


 金剛が開いた伏せカードにより、デューザは巨大なシルクハットの中に身を隠す。
 それでも黒塊の命は止まらず、アサシン、フリード、ディアボロスが1つ残らずシルクハットを薙ぎ払った。
 そしてすべての壁は取り除かれ、《ゼラの天使》の剣撃が金剛を襲った。

【金剛:LP8000→5200】


「っ……!」

『■■■■■、■■■■■』

 カードを1枚伏せて、黒塊はターンを終了させた。
 同時に、ライデン効果で2枚墓地に送られる。
 その内の1枚《ライトロード・ビースト ウォルフ》が、自身の効果で復活する。
 5体のモンスターが、黒の塊の前に佇む。

墓地へ送られたカード:《メタファイズ・タイラント・ドラゴン》《ライトロード・ビースト ウォルフ》


《ライトロード・ビースト ウォルフ》 [光] レベル4
獣戦士族/効果 ATK2100/DEF300
このカードは通常召喚できず、
カードの効果でのみ特殊召喚できる。
このカードがデッキから墓地へ送られた時に発動する。
このカードを墓地から特殊召喚する。


金剛【LP:5200】  手札:3枚
【モンスター】-
【魔法&罠】-
【フィールド】《肆万由旬の果てVer.2》

『■■』【LP:8000】  手札:1枚
【モンスター】ゼラの天使(ATK2800)、ライトレイ ギア・フリード(ATK2800)、ライトレイ ディアボロス(ATK2800)、LL・アサシン ライデン(ATK1700)、LL・ビースト ウォルフ(ATK2100)
【魔法&罠】伏せ×1枚


「私のターン、ドロー。《肆万由旬の果てVer.2》の効果。デッキから1枚を墓地へ……罠カードなので、1枚ドローする」

墓地へ送られたカード:罠カード《ブレイクスルー・スキル》


 金剛は淡々とカードの効果を処理する。
 続けて墓地のカードに指を掛け……不意に歌いだした。

「これはこの世の事ならず、死出の山路の裾野なる、賽の河原のものがたり……」

 墓地の《方界降世》を除外し、効果を発動。
 デッキから《方界胤ヴィジャム》を3体特殊召喚する。

《方界降世》 通常罠
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
デッキから「方界胤ヴィジャム」1体を特殊召喚し、
攻撃対象をそのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。
(2):自分のLPが相手より2000以上少ない場合、
墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分の手札・デッキ・墓地から「方界胤ヴィジャム」1体を選んで特殊召喚する。
相手フィールドにのみモンスターが存在する状態で発動した場合、
さらに「方界胤ヴィジャム」を2体まで選んで特殊召喚できる。


《方界胤ヴィジャム》 [闇] レベル1
悪魔族/効果 ATK0/DEF0
(1):このカードは戦闘では破壊されない。
(2):このカードが相手モンスターと
戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる。
モンスターゾーンのこのカードを永続魔法カード扱いとして
自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置き、
その相手モンスターに方界カウンターを1つ置く。
方界カウンターが置かれたモンスターは攻撃できず、
効果は無効化される。
(3):このカードの効果でこのカードが
永続魔法カード扱いになっている場合、
自分メインフェイズに発動できる。
魔法&罠ゾーンのこのカードを特殊召喚する。


「この世に生まれ甲斐もなく、親に先立つありさまは、諸事の哀れをとどめたり……」

 墓地の《方界法》を除外し、効果を発動。
 墓地のデューザを手札に戻し、召喚。
 その効果で《方界合神》を墓地へ送る。

「二つ三つや六つや七つ、十にもたらぬおさなごが、賽の河原に集まりて、苦しみ受くるぞ悲しけれ……」

 墓地の《方界業》を除外し、デッキから《方界超獣バスター・ガンダイル》をサーチ。
 それを、3体のヴィジャムを生け贄に特殊召喚。

《方界超獣バスター・ガンダイル》 [光] レベル4
獣族/特殊召喚/効果 ATK0/DEF0
このカードは通常召喚できない。
自分フィールドの「方界」モンスター3体を墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。
(1):この方法で特殊召喚したこのカードの攻撃力は3000アップする。
(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回攻撃できる。
(3):このカードが相手によって墓地へ送られた場合、
自分の墓地の「方界」モンスターを3体まで対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その後、自分のデッキ・墓地から
「方界」カード1枚を選んで手札に加える事ができる。


《方界超獣バスター・ガンダイル》ATK0→3000


「娑婆とちがいておさなごが、雨露しのぐ住家さえ、なければ涙の絶え間なし……」

 場の方界モンスターがフィールドから離れたことにより、墓地の《方界合神》を除外し効果を発動。
 デッキから《流星方界器デューザ》を特殊召喚。
 その効果で2枚目の《方界降世》を墓地へ。

《方界合神》 通常罠
(1):自分の手札・フィールドから、
「方界」融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターを墓地へ送り、
その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
(2):表側表示の「方界」モンスターが、戦闘で破壊された場合、
またはフィールドから離れた場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。
手札・デッキからレベル4以下の「方界」モンスター1体を
召喚条件を無視して特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたモンスターは、
このターン戦闘・効果では破壊されない。


「河原に明け暮れ野宿して、西に向いて父恋し、東を見ては母恋し……」

『■■■■■、■■■!』

 デューザ2体で《竜巻竜》エクシーズ召喚。その効果で、黒塊の伏せカードを破壊。
 黒塊は、破壊対象となった伏せカードを瞬時に発動させる。
 それは《ダメージ・ダイエット》だった。

《竜巻竜》 [風] ランク4
幻竜族/エクシーズ/効果 ATK2100/DEF2000
レベル4モンスター×2
(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、
フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
この効果は相手ターンでも発動できる。


《ダメージ・ダイエット》 通常罠
このターン自分が受ける全てのダメージは半分になる。
また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
そのターン自分が受ける効果ダメージは半分になる。


「恋し恋しと泣く声は、この世の声をはこと変わり、悲しき骨身を透すなり……」

 手札から《悪夢再び》発動、墓地の《方界胤ヴィジャム》と2体目の《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》を手札に戻す。
 墓地の《方界業》除外、デッキから3体目の《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》を手札に加える。

《悪夢再び》 通常魔法
(1):自分の墓地の守備力0の闇属性モンスター2体を対象として発動できる。
その闇属性モンスターを手札に加える。


「ここに集まるおさなごは、小石小石を持ち運び、これにて回向(えこう)の塔を積む……」

 手札の方界3種を相手に見せることにより、3体の暗黒方界神を特殊召喚。

《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》 [闇] レベル10
悪魔族/特殊召喚/効果 ATK3000/DEF0
このカードは通常召喚できない。
このカード以外の手札の「方界」カード3種類を
相手に見せた場合のみ特殊召喚できる。
このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードは、このカード以外の元々の攻撃力が
3000以下のモンスターが発動した効果を受けない。
(2):このカードの攻撃でモンスターを破壊した時に発動できる。
このバトルフェイズ中、このカードはもう1度だけ攻撃できる。
(3):自分エンドフェイズに発動する。
お互いのプレイヤーは3000ダメージを受ける。


「手足石にて擦れただれ、指より出ずる血の滴、体を(あけ)に染め成して……」

 《方界波動》をクリムゾン・ノヴァの内1体と、《ライトレイ ディアボロス》を対象に発動。

《方界波動》 通常魔法
(1):自分フィールドの「方界」モンスター1体と
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
その自分のモンスターの攻撃力を倍にし、
その相手のモンスターの攻撃力を半分にする。
(2):自分の墓地から、このカードと「方界」モンスターを任意の数だけ除外し、
除外した「方界」モンスターの数だけ
相手フィールドの表側表示モンスターを対象として発動できる。
そのモンスターに方界カウンターを1つずつ置く。
方界カウンターが置かれたモンスターは攻撃できず、効果は無効化される。


《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》ATK3000→ATK6000
《ライトレイ ディアボロス》ATK2800→ATK1400


「一重積んでは幼児が、紅葉のような手を合わせ、父上菩提と伏し拝む……」

 金剛は、以前の理性を失っていた。

 かつては、こうではなかった。
 老人のtravelerと語らい。
 少年のtravelerを諭し。
 
 だが、そうではなくなってしまった。
 そのきっかけは、伊良湖に『瞳』を授かった故。

「二重積んでは手を合わし、母上菩提回向する……」

 それでも、デュエリストとしての論理は残っている。
 現に、手持ちのカードを駆使してこの状況を作り出した。
 三回攻撃、連続攻撃、魔法・罠カードの破壊。
 強力な効果を持ったモンスターを5体並べた。
 攻撃回数からすれば黒塊のモンスターを全て葬り去り、なおかつライフポイントを奪い去るには十分すぎるほどだ。

「三重積んでは古里に、残る兄弟わがためと、礼拝回向ぞしおらしや……」

 墓地の《方界波動》を《方界帝ゲイラ・ガイル》1体と共に除外、ディアボロスに方界カウンターを載せる。
 さらに墓地の《方界縁起》を除外し、効果発動。
 これで、このターン《方界波動》の効果を得たクリムゾン・ノヴァが方界カウンターを載せたモンスターを倒せば、その攻撃力に応じた効果ダメージを発生させる。
 
 ……金剛の、デュエリストとしての論理も破綻し始めているのかもしれない。
 攻撃の手が過剰すぎる。
 まるで、猛進するかの様に
 どこか、恐怖に慄く様に。

「……《方界波動》の効果を得たクリムゾン・ノヴァでディアボロスを攻撃!」

 急に、デュエルの進行に関する言葉を取り戻した金剛。
 強化された神が、刃の付いた触手を蠢かせ光の竜魔王に襲い掛かる。

【『■■』:LP8000→5200→3800】


 戦闘によるダメージ、効果によるダメージ。
 《ダメージ・ダイエット》で半減されているとはいえ、そのダメージ量は膨大。
 さらに、クリムゾン・ノヴァはモンスターを破壊した場合、連続攻撃が可能。
 ゼラの天使を狙い、再び動き出す。

【『■■』:LP3800→2200】


 1体目の殺戮に続く様に、残りの神も進撃を開始。
 その能力で、次々と光の軍勢を葬ってゆく。

【『■■』:LP2200→2100→1450→1000】


 最後に残った獣戦士、《ライトロード・ビースト ウォルフ》を倒した邪神が黒塊自身に狙いを定めた、その時。

『■■■■■、■■■!』

 黒塊は、墓地のモンスター効果を発動した。
 飛び出した《クリアクリボー》の体が割れ《マシュマロン》が黒塊の前に現れた。
 マシュマロンはその能力で戦闘破壊されない。
 金剛のモンスター達の苛烈な攻撃を、全て受け止める砦となった。

《クリアクリボー》 [光] レベル1
悪魔族/効果 ATK300/DEF200
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):(省略)
(2):相手モンスターの直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
そのドローしたカードがモンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚できる。
その後、攻撃対象をそのモンスターに移し替える。


《マシュマロン》 [光] レベル3
天使族/効果 ATK300/DEF500
(1):このカードは戦闘では破壊されない。
(2):裏側表示のこのカードが攻撃されたダメージ計算後に発動する。
このカードを攻撃したモンスターのコントローラーは1000ダメージを受ける。


「カード2枚を伏せ……これで、ターン終了」

 ターン終了を宣言する金剛。
 同時に、クリムゾン・ノヴァ達が猛り狂う様に雷光を吐き出した。
 敵味方問わず3000ダメージを与える、凶暴な効果。
 3体とも発動するので、互いの受けるダメージは9000にも達する。

『■■■■■!』

 瞬時に、黒塊は手札のカードを墓地に送った。
 それは《ハネワタ》。効果ダメージを防ぐ効果を持つ。
 これで、ダメージを受けるのは金剛のみ。

《ハネワタ》 [光] レベル1
天使族/チューナー/効果 ATK200/DEF300
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン、自分が受ける効果ダメージは0になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。

 
 恐らく、黒塊はギリギリまで待ったのだ。
 自分には、この効果ダメージを受ける手段がない……金剛に、そう思わせようと。
 顔がどこにあるかすらわからない有様だが、黒塊は金剛を嘲笑ってるかのようだった。

【金剛:LP5200→2200→800→800】


『■■!?』

「……デュエリスト能力、“八百比丘止(エイトビート)”。私のライフは800より下になることはない……嘲笑うのは、まだ早い」

八百比丘止(エイトビート)
自分のライフは、800より下の値にならない。


金剛【LP:800】  手札:1枚
【モンスター】暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ(ATK3000)×3、方界超獣バスター・ガンダイル(ATK3000)、竜巻竜(ATK2100)
【魔法&罠】伏せ×2
【フィールド】《肆万由旬の果てVer.2》

『■■』【LP:1000】  手札:0枚
【モンスター】マシュマロン
【魔法&罠】-


 黒塊のターンに移る。
 心なしか憤る様に、黒塊はデッキに深く指を掛けた。

『……“■■■■■(グル、マン、ドロー)”』

美食の宝札(グルマンドロー)
自分のドローフェイズ時に発動できる。
通常のドローを行わない代わりに、自分の墓地のカードをすべて除外し、
除外した枚数だけ自分はデッキからカードをドローする。


「そちらも、デュエリスト能力持ちか」

 墓地のカードをコストに大量ドローを行う能力。
 手札とした15枚ものカードを、舐めるように指で撫ぜていく。

『■■■■■』

 さらに金剛のワールドカードの効果を発動。
 モンスターカードだったので追加ドローはなかったが、もはや些細な差だ。

墓地に送られたカード:モンスターカード《ダメージ・イーター》


 膨れ上がった手札、攻め手は膨大。
 その最初の一手として放たれた魔法カードは、強大な暗黒だった。
 フィールド上のモンスターを全て飲み込み破壊する、黒の渦。

《ブラック・ホール》 通常魔法
(1):フィールドのモンスターを全て破壊する。


「その程度……。闇より深く、なお暗く……伏せカード《方界合神》。3体のクリムゾン・ノヴァを融合し……《暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ》!」

《暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ》 [闇] レベル10
悪魔族/融合/効果 ATK4500/DEF3000
「暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ」×3
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ特殊召喚できる。
(1):フィールドのこのカードは相手の効果の対象にならず、
相手の効果では破壊されない。
(2):このカードの攻撃宣言時に発動する。
相手のLPを半分にする。
(3):このカードの攻撃でモンスターを破壊した時に発動できる。
このバトルフェイズ中、このカードはもう1度だけ攻撃できる。
(4):自分が効果ダメージを受けた場合に発動する。
受けたダメージの数値分だけ相手にダメージを与える。


 黒の渦になにもかもが飲み込まれる中、3体のクリムゾン・ノヴァはその歪な姿をさらに歪めながら1つになってゆく。
 他のモンスターが消え去った中、佇むのはおぞましき深き闇の邪神。

 それだけではない。
 葬り去られた方界超獣の置き土産、3体の方界モンスターが金剛の場に戻り、方界カードが金剛の手札に。
 まず、フィールド上に戻って来たのは、1体のヴィジャム、2体のデューザ。
 当然、デューザの効果が発動し《方界合神》、《方界法》が墓地へと送られる。
 そして、手札に加わった罠カード《方界異相》を、金剛はフィールドに置いた。

「《方界異相》を手札から発動。これで、メインフェイズ2に強制的に移行させる」

《方界異相》‡ 通常罠
このカードはメインフェイズ1にのみ発動できる。
(1):自分の除外されている「方界」カード3種類を1枚ずつ選択して発動できる。
選択したカード3枚を自分のデッキに加えてシャッフルする。
その後、このターンのメインフェイズ2になる。
(2):このカードが相手ターン中に手札に加わった場合、
そのまま手札から発動できる。


戻すカード:《方界帝ゲイラ・ガイル》《方界業》《方界法》


 強制的なフェイズ移行。これで黒塊はバトルを行うことが出来ない。
 途切れない金剛の方界達。
 黒塊は鬱陶しそうに、ひたひたと手を蠢かす。
 程なくして手札から光の魔術師2体を呼び出し、それをエクシーズ素材として闇の竜血鬼を呼び出した。

《ライトレイ マドール》 [光] レベル6
魔法使い族/効果 ATK1200/DEF3000
ゲームから除外されている自分の光属性モンスターが3体以上の場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない。


《№24竜血鬼ドラギュラス》 [闇] ランク6
幻竜族/エクシーズ/効果 ATK2400/DEF2800
レベル6モンスター×2
(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、
エクストラデッキから特殊召喚された表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを裏側守備表示にする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合に発動できる。
このカードを裏側守備表示で特殊召喚する。
(3):このカードがリバースした場合に発動する。
フィールドのカード1枚を選んで墓地へ送る。


『■■■■■、■■■■■』
 
 さらに、1体のモンスターを裏側守備表示でセット。
 魔法・罠カードを5枚セット。

 自らのフィールドをカードで埋め尽くし、黒塊は自分のターンを手放した。

金剛【LP:800】  手札:1枚
【モンスター】暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ(ATK4500)、流星方界器デューザ(ATK1600)×2、方界胤ヴィジャム(DEF0)
【魔法&罠】伏せ×1枚
【フィールド】《肆万由旬の果てVer.2》

『■■』【LP:1000】  手札:6枚
【モンスター】№24竜血鬼ドラギュラス(DEF2800)、裏守備×1体
【魔法&罠】伏せ×5枚


「私のターン、ドロー……《肆万由旬の果てVer.2》の効果で1枚墓地へ……モンスター以外だったので1枚ドロー……」

墓地に送られたカード:魔法カード《名推理》


『■■■■■、■■■!』

 ここで、金剛のターンでありながら黒塊が動いた。
 除外されていた《メタファイズ・タイラント・ドラゴン》の効果が発動したのだ。
 
《メタファイズ・タイラント・ドラゴン》 [光] レベル8
幻竜族/効果 ATK2900/DEF2500
(1):「メタファイズ」モンスターの効果で
特殊召喚したこのカードは罠カードの効果を受けず、
このカードがモンスターを攻撃した場合もう1度だけ続けて攻撃できる。
(2):このカードが除外された場合、次のターンのスタンバイフェイズに
除外されているこのカードをデッキに戻して発動できる。
手札から「メタファイズ」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは次のターンのエンドフェイズに除外される。


 《メタファイズ・タイラント・ドラゴン》の導きにより、黒塊の手札から《メタファイズ・ダイダロス》が現れる。
 その効果により、特殊召喚モンスターは全て除外されてしまう。

《メタファイズ・ダイダロス》 [光] レベル7
幻竜族/効果 ATK2600/DEF1500
(1):このカードが「メタファイズ」モンスターの効果で
特殊召喚に成功した場合に発動できる。
このカード以外のフィールドの特殊召喚された表側表示モンスターを全て除外する。
(2):このカードが除外された場合、
次のターンのスタンバイフェイズに除外されている
このカードをデッキに戻して発動できる。
デッキから「メタファイズ・ダイダロス」以外の
「メタファイズ」カード1枚を除外する。


 黒塊の元にいるドラギュラスも除外されてしまうところだが、その余波から逃れるべく自身の効果で裏守備となった。
 しかし、金剛はその除外自体を許さない。

「墓地の《ブレイクスルー・スキル》を除外し効果発動。メタファイズ・ダイダロスの効果を無効にする」

《ブレイクスルー・スキル》 通常罠
(1):相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。
その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
(2):自分ターンに墓地のこのカードを除外し、
相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。
その相手の効果モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。


 沈黙する《メタファイズ・ダイダロス》。とはいえ、その身は健在。
 続けて《ゼラの天使》が帰還。金剛の方界モンスターに対し、防御態勢をとる。

『■■■■■、■■■!』

 続けて黒塊の伏せカードの1枚《ダブル・サイクロン》が開いた。
 金剛の伏せカード《神の通告》と、黒塊の伏せカード《アーティファクト-デスサイズ》が破壊される。

《ダブル・サイクロン》 速攻魔法
(1):自分フィールドの魔法・罠カード1枚と、
相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


《神の通告》 カウンター罠
(1):1500LPを払って以下の効果を発動できる。
●モンスターの効果が発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
●自分または相手がモンスターを特殊召喚する際に発動できる。
その特殊召喚を無効にし、そのモンスターを破壊する。


《アーティファクト-デスサイズ》 [光] レベル5
天使族/効果 ATK2200/DEF900
(1):このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠ゾーンにセットできる。
(2):魔法&罠ゾーンにセットされたこのカードが
相手ターンに破壊され墓地へ送られた場合に発動する。
このカードを特殊召喚する。
(3):相手ターンに、このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。
このターン、相手はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。


「……アーティファクト……」

 アーティファクトモンスターは、共通効果として魔法・罠ゾーンに伏せることが出来、破壊されるとモンスターとしてフィールド上に特殊召喚される。
 大鎌のアーティファクト、デスサイズはEXデッキからの特殊召喚は封じる。

「昼はおのおの遊べども、日も入相(いりあい)のそのころに……」

 墓地の《方界法》を除外し《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》を墓地から手札へ。
 そして3枚の方界カードを見せ特殊召喚。
 
「冥途の鬼があらわれて、幼きものの傍により、やれ汝らなにをする……」

 手札から魔法カード《方界停滞》を発動。
 方界達は黒塊からの効果への耐性を得た。

《方界停滞》‡ 速攻魔法
(1):このカードの発動後、ターン終了時まで
自分は「方界」モンスターでしか攻撃できず、
自分フィールド上の表側表示の「方界」モンスターは
相手の効果で自分フィールド上を離れず、
互いのプレイヤーは「バトルフェイズを終了させる」効果を含む、
モンスターの効果・魔法・罠の効果を発動できない。


 さらにデューザ2体、ヴィジャムを墓地へ送り《方界超帝インディオラ・デス・ボルト》を特殊召喚。
 効果で黒塊に800ダメージ。

《方界超帝インディオラ・デス・ボルト》 [光] レベル4
天使族/特殊召喚/効果 ATK0/DEF0
このカードは通常召喚できない。
自分フィールドの「方界」モンスター3体を墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。
(1):この方法で特殊召喚したこのカードの攻撃力は2400アップする。
(2):このカードが手札からの特殊召喚に成功した場合に発動する。
相手に800ダメージを与える。
(3):このカードが相手によって墓地へ送られた場合、
自分の墓地の「方界」モンスターを3体まで対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その後、自分のデッキ・墓地から「方界」カード1枚を選んで手札に加える事ができる。


《方界超帝インディオラ・デス・ボルト》ATK0→2400


『■■』:LP1000→200


「娑婆と思うて甘えるな、ここは冥途の旅なるぞや……」

 方界モンスターが墓地へ送られたことにより、墓地の《方界合神》を除外し3体目の《流星方界器デューザ》を特殊召喚。
 その効果により、墓地へ《方界業》が送られ、それを除外し《方界帝ゲイラ・ガイル》を手札に。 
 手札から《方界胤ヴィジャム》を通常し、それを墓地に送り《方界帝ゲイラ・ガイル》を特殊召喚。
 再び、黒塊に効果で800ダメージ。これが通れば、黒塊のライフは0だ。

《方界帝ゲイラ・ガイル》 [風] レベル2
天使族/特殊召喚/効果 ATK0/DEF0
このカードは通常召喚できない。
自分フィールドの「方界」モンスター1体を墓地へ送った場合に特殊召喚できる。
(1):この方法で特殊召喚したこのカードの攻撃力は800アップする。
(2):このカードが手札からの特殊召喚に成功した場合に発動する。
相手に800ダメージを与える。
(3):(省略)


《方界帝ゲイラ・ガイル》ATK0→800


『■■■■■、■■■!』

 黒塊は、墓地の《ダメージ・イーター》を墓地から除外し、そのダメージを回復へと変換。
 踏みとどまっている、すんでのところで。

《ダメージ・イーター》 [闇] レベル2
悪魔族/効果 ATK100/DEF800
相手がダメージを与える魔法・罠・効果モンスターの効果を発動した時、
墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する事ができる。
その効果は、ライフポイントを回復する効果になる。
この効果は相手ターンにのみ発動する事ができる。

 
『■■』:LP200→1000


「…………」

 歌を止め、黒塊のフィールドに顔を向ける金剛。
 相手の場には、守りを固める総勢5体のモンスター。
 その後ろでは未だ開かれぬ3枚の伏せカード、6枚の手札。

 金剛の場には、エンドフェイズ時には互いに3000ダメージを与える《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》がいる。
 だから、このままエンドフェイズに移行すれば、黒塊だけが効果ダメージを受けライフが尽きる。
 金剛はデュエリスト能力によってライフが0にならないから、それで勝利だ。

 だが、あれだけ手持ちのカードがあれば、凌ぐ手段を手中に収めてる可能性は高い。
 それだけでなく、反撃の手段も多数用意できているだろう。
 
 金剛は、いくらダメージを与えられようと、デュエリスト能力でライフを0にされることはない。 
 だが、デュエルに勝つ手段はなにもライフを0にするだけではない。
 デッキ破壊、カード効果による特殊勝利……大量ドローを可能にする能力を有する黒塊ならば、デッキにそれら特殊勝利の方策を仕込み、戦術をそちらにシフトしてくる可能性もある。

 一応《肆万由旬の果てVer.2》の2の効果により、間接的な対策は講じられている。

《肆万由旬の果てVer.2》 フィールド魔法・ワールドカード
0.(省略)
1.(省略)
2.デュエル中に1度、バトルフェイズ時以外でプレイヤーが
デュエルの勝利条件を満たした場合に適用される。
そのプレイヤーは勝利が確定する前に8000ダメージを受ける。

 
 バトルフェイズ外で勝利を満たしたプレイヤーは、その勝利確定前に8000ダメージを受ける。
 例え黒塊が勝利条件を満たそうとも、この効果で勝利する前にライフを失って先に敗北してしまう。
 デッキ破壊や特殊効果による勝利はバトルフェイズ外で成立する事が多いので、これで対策できると言う訳だ。
 
 とはいえ、この効果はあくまでダメージを与えるだけ。
 黒塊がダメージを防ぐ手だてを持っているならば、まったく意味のない効果となる。

「バトルフェイズに移行……」

 だから金剛は、黒塊をここで仕留めるために、攻撃を選択。バトルフェイズへの移行を宣言する。
 少なくとも《方界停滞》の効果で、自分の方界達は相手側の効果に耐性を得ている。バトルフェイズを終了させられる事もない。
 当然だ。当然の選択だ。

 だからこそ、見抜けなかった。
 それこそが、黒塊の狙いだと。
 
「――■■■■■、■■■■■!」

《ライバル・アライバル》 速攻魔法
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分・相手のバトルフェイズに発動できる。
モンスター1体を召喚する。


《守護神エクゾディア》 [闇] レベル10
魔法使い族/効果 ATK?/DEF?
このカードは特殊召喚できない。
このカードの(1)の方法で召喚したこのカードが、
元々の持ち主が相手となる悪魔族・闇属性モンスターを戦闘で破壊した時、
自分はデュエルに勝利する。

(1):このカードはモンスター5体をリリースして召喚する事もできる。
(2):このカードの攻撃力・守備力は、
このカードを召喚するためにリリースしたモンスターの
元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値になる。


《守護神エクゾディア》ATK?→10000


「……!? と、止まれ、方界達!!」

 黒塊の従えていたモンスター5体が捧げられ、巨大な黒の守護神が現れた。
 その有する能力により、御誂え向きの勝利の贄となった暗黒方界邪神を逃すため、金剛はバトルフェイズからの離脱を試みる。

 だが、黒塊の罠がそれを許さない。
 極みの星による導きにより、方界達は吸い寄せられてゆく。

《竜星の極み》永続罠
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
攻撃可能な相手モンスターは攻撃しなければならない。

(2):(省略)


「あ……あぁ……」

 潰される、砕かれる、薙ぎ払われる――次々と消え逝く方界達。
 そして邪神が葬られると同時に……金剛の命運も尽きた。

【金剛:LOSE】


「あ……ぐぇ……」

 嘔吐く様にその場にへたり込む金剛。
 その目に巻かれた黒の包帯がほどけ、目元が露わになる。

 閉じられている右目、開かれている左目。
 その左目には義眼がはめ込まれていた。
 色は真っ青、虹彩部分は金色。伊良湖の作った『瞳』だ。

 『瞳』は、視覚のなかった金剛に光を齎した。

 幾重も波打つ青を見た。
 一面に生い茂る緑を見た。
 聳え立つ灰の群れを見た。
 
 素晴らしかった。
 闇の中にいたのでは知りえなかったこと、それを知覚できたのが嬉しかった。
 
 視力の欠損を補うために持っていた把握能力と合わせ、その力は拡大していく。
 金剛も、それを止めることはしなかった。
 もっと見たい。もっと奥へ。もっと先へ。

 そして――金剛はある時、全てを閉じた。
 光を避け、闇の中へ。
 何を見たのか、何を知ったか。
 何もかもを曖昧にしたまま、金剛は停滞を選んだ。

「ふ……うふふふふふ…………」

 金剛の口から、乾いた笑いが漏れる。
 顔を上げ、叫びを吐き出した。

「伊良湖! 貴方はこれを知っていたのか!? それとも、知りえなかったことを私に探らせたのか! どこまで、どこまで知っているんだ! 何をさせたかったんだ! 私を嘲笑っていたのか! それとも今嘲笑っているのか! 旅人(traveler)でありながら、旅路を諦めた私を!?」

 叫び終えた金剛は、前を見据える。
 金剛の『瞳』が捕らえたのは、広がる虚無。
 自らに向かい来る黒塊、その中心部分に何もない闇の空間が広がっていた。

「貴方も……そうなのか?」

 その言葉を最後に、金剛は黒塊の虚無に飲み込まれた。



――――――――――――――――――――



 黒塊の穴が閉じられる。
 そこに、いつの間にか白い仮面が現れていた。

『……ぇ……ぅ……ぁあ…………』

 確かめるように、声の断片が漏れる。
 混濁した意識が収拾されていくのがわかる。
 視界にかかった靄が晴れてゆくようだった。

『はは……ははは……』

 それでも、全ては思い出せない。
 “彼女”に出会い、力を貰い……それから、どうしていた?

『そう……そうだ……伊良湖だ……』

 そうだ、金剛の言っていた、伊良湖。
 上位のtraveler、アイテムに執心する好事家。

『そこで……そうだ……手に入れんだ……』

 金剛との決闘で使った、様々な光が混在するデッキ。
 自らの体の内部に感じる、胎動する『球体』の力。

 何故、忘れていたのだろう。
 何故、思い出せないのだろう。

 もしそうなら、伊良湖は自分を思い出しているはずなのに(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

『まあ、いいさ……ゆっくり思い出そう……夢は遠い……旅はまだまだ続くさ……』

 黒塊が、仮面を外す。
 そこには、先程まで対峙してしたはずの女――金剛の顔があった。

『まず一人……金剛が、僕を『思い出して』くれたからねぇ! ははは! あははははははは!』

 金剛の顔で黒塊――後に『死神』と呼ばれるそれは、高らかに笑った。
 その笑い声もやがて聞こえなくなる。
 誰も彼もが去った闇の中、ただただ静寂だけが佇んでいた。




  



2019.05.01 | コメント(4) | 未分類

コメント

たとえ闇に呑まれても・・・

破滅の光に苛まれるよりは幸せなのかもしれない・・・。

というわけで、ラギさんによる投稿、今度は尼僧による仏教尽くしな話です。
《肆万由旬の果て》から始まり、地獄を暗示する口上の数々、たまらない・・・!

映画では禍々しい印象の【方界】デッキですが、今回は、むしろ縋りたくなる印象。
邪神トリニティの出現に、ここまで安心感を覚える日が来るとは・・・・・・。
金剛さんの破綻と恐慌の象徴でありながら、“崩壊”を押し留めている感じですね。


打って変わって、相手側の光属性を多用するデッキの、不気味なこと。
伊良湖さんのデッキは、メタファイズを含む光属性混成とのことですが、
ほうきのバチカルさんよろしく、「光」の禍々しさに溢れていますね。
(本人が使ったときの印象は、また違うかもしれませんが)

闇星のライトロードは、神々しくて清らかで、黄昏ロードも清濁併せた決意の象徴。
ほうきのライトロードは、旧掲示板であった「狂信者の群れ」という形容が頷ける。

プロたんさんが童実野DM大会のときに言ってたことでもありますが、
同じモンスターでも、使い手によって印象が全く異なるのが、私は大好きなんだナァ!
鶴岡ティーチャーの【ライトロード】は、光り輝く頭悩!


黒塊の正体は、名前やダイエットなど、序盤から所々で暗示されているのですが、
わかっていても戦慄する「グル、マン、ドロー」の宣言・・・! ゾクッとした!

それからは続々と、「黒い穴」、「24」、「デスサイズ」、そして「イーター」・・・・・・
最後に光と闇が逆転し、見出した光が絶望の闇に呑まれていく様などは、もうね・・・!


というわけでラギさん、投稿ありがとうございました!


2019-05-14 火 00:00:33 | URL | アッキー [ 編集 ]

その光のまた、闇に溶けるのだ

アッキーさん、掲載&感想ありがとうございました。ラギです。

>仏教尽くし
元々没キャラになるはずだった金剛さんですが、思わぬ形での再登場となりました。
気の毒な立ち位置になってしまいましたが・・・。
仏教繋がりで《肆万由旬の果て》やら「賽の河原地蔵和讃」なんかを引用させてもらいました。

>【方界】
あ、この話の題名「traveler金剛の崩壊」にしてもよかったかな?
デッキ名繋がりで。
でも、まだ崩壊をせずなんとか留まってたから、これでよかったのかな・・・?

>「光」の禍々しさ
元々は目の見えない金剛さんが『死神』を伊良湖と誤認する設定で発案した話でしたが、デュエルさせるとなるとどうしてもムリが出て来てしまうため、この形に落ち着いたんでしたねぇ。
その辺の繋がりから、伊良湖さんのデッキ、というかカード選択のクセとして「光」属性を好む、という設定から今回のデッキになりましたが、「除外をトリガーとするメタファイズ」と「カードを除外してドロー枚数を増やす美食の宝札」のシナジーもあって中々良い選択だったと思います。
ただ、自分がそんな長いデュエルを書けなかったこともあって、メタファイズは味付けくらいでライトレイがメインになりましたが・・・。

>「黒い穴」、「24」、「デスサイズ」、「イーター」
実を言うと、ブラックホールとデスサイズは『死神』をちょっと意識しましたが、イーターは偶然ですね・・・24に至っては元ネタがわかんないや!

そんなわけで、ありがとうございました。では、また。

2019-05-18 土 01:39:42 | URL | ラギ [ 編集 ]

おはぎ、もとい侵入する黒い塊。『死神』だー!

本日のワールドカードは《肆万由旬の果て》。1番目は墓地肥やしor手札増強効果。2番目はバトル以外での勝利妨害。
第二の効果のためにバーン勝利が遠い感じですな。ライフを溜めるか、殴り合いするかの二択か。

《光の援軍》から始まり、特殊召喚によってドンドン光が集まっていく。すげえ展開力だ。
《ゼラの天使》、もとい天死。除外に強いし、墓地に行った後は除外するだけで蘇生する、どっしり構えた感じのカード。シンプルな名前だけども、それが良い。

一方の方界デッキの展開力も凄い。尼さんの金剛さんが使うだけあって、法界とのダブルミーニングと見た。
デュエルの時に性格が大なり小なり変わる人は多いと思いますが、どうやら金剛さんのそれは別の話らしい。伊良湖さんの『瞳』で一体、何を見たというのだろう・・・。まさか、第一位の強さの秘密とか?

>“八百比丘止(エイトビート)”
>自分のライフは、800より下の値にならない。
ど、どうやって倒せばいいんだ!?って、特殊勝利か。←《肆万由旬の果て》、第二の効果を忘れてる。
だが、『死神』の答えは守護神エクゾディア!バトルフェイズ中の特殊勝利だとー!?ターン終了時はフィールドに二体だけだったのに、五体揃えてくるとか凄い・・・。“美食の宝札(グルマンドロー)”と光、相性良過ぎぃ!

アーティファクト-デスサイズ、これほど『死神』に相応しいカードもないですね。

『死神』の奴、『思い出し』やがった・・・。ただ、伊良湖さんは難を逃れた、か?

2019-05-18 土 09:33:28 | URL | 千花白龍 [ 編集 ]

死神、おはぎ説

実際、今回の話で出てくる『死神』は仮面をつけてないから、黒い塊、実質おはぎ。Q.E.D. 証明終了。
そんなわけで、白龍さん、感想ありがとうございます。

>肆万由旬の果て
最初は“闇の世界”にするつもりだったんですが、何となくイメージに合わない気がしたので、ワールドカードにしました。
いつかはわからないけど、金剛さんも憩いの湖の世界を訪れていたのか……ワールドカードが存在する別の世界で手に入れた、って可能性もなくはないでしょうが。

>ゼラの天使
最初に書いたデュエルでは、もっとシンクロモンスターを展開しまくって収集がつかなくなったので、結局シンクロはこの子だけになりましたね。
除外に対応する効果が美食の宝札とシナジーして良い感じでした。

>法界
そもそも【方界】カードたちのネーミングも仏教関連由来っぽいですからね。
方界登場の映画やZEXALを担当した監督さんは、この2作品で仏教、というかインド系モチーフを結構取り入れてるので(ドン・サウザンド最終形態が蓮の花から覚醒したりとか)趣味なのかもしれません。
金剛さんは『瞳』にて何を見たのか……偶然ですが、32話で高見沢が似たようなことを言ってますね。

>守護神エクゾディア
最初は普通にライフを削り切っての勝利だったのですが、なんか物足りない気がして何か特別な勝ち方を取らせたいな、と考えて《守護神エクゾディア》に目を付けました。
で、こいつの見せ場をつくるために《肆万由旬の果て》や“八百比丘止”の効果を決定した、という経緯でしたかね。
そういや初期案では「伊良湖が金剛を倒させるために、《肆万由旬の果て》や“八百比丘止”の穴を付ける《守護神エクゾディア》を『死神』に託したのではないか」的な疑念を書く考えもあったのですが、纏まりが悪い気がして、いつの間にかボツになってましたね……というか、自分いつの間にかボツにすること多いな……。

感想ありがとうございました。それでは、また。

2019-05-19 日 01:48:45 | URL | ラギ [ 編集 ]

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