憩いの湖の世界 おまけ


田宮がこの世界を去ってすぐのことだった。

「くそっ!待て、田宮!」

何とこの世界にもう一人「traveler」が来ていたのだ。

「おお、いらっしゃい。」
「新しい「traveler」さんですね。ようこそ、憩いの湖へ。私達はあなたを歓迎します。」

「えっ!?新しいとらべらー来たの!?」
それに気が付いてパルナちゃんも湖の小屋から戻ってきた。

「ちっ…。田宮め、オレの新しい力に恐れをなして逃げたか…。おっと、あんたらはこの世界のデュエリストだっけな。オレは北村(きたむら)。「traveler」だ。」

北村と名乗った「traveler」は、見た目は10代の少年で、黒い前髪が鋭く尖っているのが特徴的だった。

「この世界はいいな、色んな世界の強いカードが集まっているって感じだ。しかも、1枚だけだがオリジナルカードまで作れるじゃねえか!オレが作ったカードはコイツだ!」


勝利の証
通常魔法(オリジナルカード)
手札、デッキにあるこのカードを相手プレイヤーに見せることで自分はデュエルに勝利する。


「おお…。」
「ああ…。」
「なるほど。」

パルナちゃんは少しばかりキョトンとし、白龍は少し目を細め、翼はいつも通りの笑みを浮かべていた。

「こいつがある限りオレはもう誰にも負けねえ!もちろん、あんたらでもな!」

その言葉を聞いてパルナちゃんは首を傾げた。
「ねえ、きたむらー。そのカードでよかったの?」

「ん?どういう意味だ?」

「そのカードって、絶対に勝つってカードだよね?」

「その通りだ!どんなデュエリストが相手でも絶対に勝つ!」

「…それって、一番弱いってことだよね…?」

「おう、その通……ん?」
北村は少し考えた。
「…オレの聞き間違いか?一番弱いって聞こえたが、一番強いの間違いだろ?」

「…違うよ。デュエルで絶対に勝つってことは一番弱いってことだって言ったんだよ。」
その時、北村はパルナちゃんの雰囲気が変わっていることに気が付いた。先ほどまでの無邪気な雰囲気ではない。歴戦の戦士、それも凶戦士に近いような強いオーラを放っていた。
「ちょっと、パルナと戦おっか。」

白龍と翼は顔を見合わせたが、それ以降は特に行動を起こさなかった。この状況を見守ることにしたようだ。

「いいぜ!オレが勝つがな!」

パルナちゃんはデッキから1枚のカードを取り出して、北村に見せた。

「龍駆ける天空(どらごん・わあるど)は―――――。」

「知ってるぜ。発動状態でデュエルを開始出来るんだろ?」


龍駆ける天空(どらごん・わあるど)Ver.11
フィールド魔法(ワールドカード)
0.デュエル開始直前にデッキのこのカードを相手に見せることで、このカードを発動した状態でデュエルが始まる。この効果を使用した場合、自分はデッキ変更できず、このカードはフィールドを離れず、効果を無効にできない。このカードは他のフィールドカードと共存する。
(省略)


「じゃあ、ルールはライフ4000のマスタールール2でいいよね。」

「いいぜ、どんなデュエルでもオレが勝つからな!」


パルナちゃん&北村「デュエル!!」

パルナちゃん「竜は最強の生物」デッキ
北村「勝利ぃぃぃいいいいい!」デッキ



「ひゃは!」
北村は来た手札を見て叫んだ。
「手札に勝利の証が来たぜ!オレの勝ちだ!」


勝利の証
通常魔法(オリジナルカード)
手札、デッキにあるこのカードを相手プレイヤーに見せることで自分はデュエルに勝利する。


「パルナのターン、ドロー。」

「あん…?」

北村が不思議がるのも無理はない。既に勝利の証によってデュエルは決着したはずだ。にも関わらずデュエルは進行している。

「まず初めに言っておくね。パルナのフィールドにある龍駆ける天空(どらごん・わあるど)Ver.11の効果で特殊勝利は封じられているんだよ。」

「なっ!?ヴァージョンじゅういち!?」


龍駆ける天空(どらごん・わあるど)Ver.11
フィールド魔法(ワールドカード)
(省略)
11.戦闘ダメージ、もしくはカード効果によるダメージによってライフポイントが0になる以外の勝利方法は無効となる。


「そして、パルナは龍駆ける天空(どらごん・わあるど)Ver.11の7.の効果を発動するよ。」


龍駆ける天空(どらごん・わあるど)Ver.11
フィールド魔法(ワールドカード)
(省略)
7.自分のスタンバイフェイズ時にデッキの上から3枚までカードを墓地へ送ることができる。この効果で墓地へ送ったドラゴン族モンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。
(省略)


「1枚目…。」
パルナちゃんはデッキトップからカードを引いた。その雰囲気は鬼気迫るものがあった。
「ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン!」


青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)
通常モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。
どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。


「なあっ!?」

北村はまるで滅びのバーストストリームを受けたかのような衝撃に襲われた。

「ぐええええ!!」

北村LP4000→1000

「2枚目…。」
パルナちゃんはデッキトップに手をかけた。

「ま、待て…!」

パルナちゃんの耳には北村の言葉はもう届いていないようだった。
「ブルーアイズ・オルタナティブ・ホワイト・ドラゴン!」


青眼の亜白龍(ブルーアイズ・オルタナティブ・ホワイト・ドラゴン)
特殊召喚・効果モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
このカードは通常召喚できない。手札の「青眼の白龍」1体を相手に見せた場合に特殊召喚できる。この方法による「青眼の亜白龍」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。
(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「青眼の白龍」として扱う。
(2):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。


「ぐああああ!!!」
北村は爆風で吹き飛び、地面を転がった。

北村LP1000→0

「3枚目…!」

「ひっ!!」

パルナちゃんが3枚目のカードをデッキから引こうとした瞬間だった。
「はい、スットーップ。」
ぽふんっと白龍がパルナちゃんの頭を撫でた。同時に翼がパルナちゃんのデッキを押さえていた。
「相手のライフポイントが0になったので終了ですよ。」

辺りには勝利者のパルナちゃんの顔が表示され、そしてソリットヴィジョンが消えていった。





「ふうっ。」
パルナちゃんは一息吐いた。それと共に鬼気迫る雰囲気が消えた。
「…ねえ、きたむらー。これじゃ、決闘(デュエル)じゃなくて作業じゃない?」

「さ、作業…?」
北村は自分の手にある勝利の証に目を落とした。
「…。」

「確かにさ、デュエルは勝ったら楽しい、負けたら悔しい。だから次は勝ちたいって思う。でも、絶対に勝つって本当にデュエルなのかな?絶対がないからデュエルなんじゃない?」

「…。」
北村は押し黙ってしまった。

「ねえ、きたむらー。次は『神様のデュエル』をしようよ。」

「神様の…デュエル…?」

「そ、『デュエルで勝つ』じゃなくて『デュエルをする』ってこと。きたむらーはない?新しいデッキを組んで夜も眠れなかったこと。真夜中までデュエルばっかりしたこと。何十回デュエルしてももう一回デュエルしたいって思ったこと。勝ちも負けも何度も繰り返して、その内勝ち負けなんてどうでもよくなって、デュエルしている時間がずっと続けばいいのにって思って、デュエルすること自体が凄く楽しくて、嬉しくて、特別なことだって思ったことはない?」

「あの時は後半眠かったです…。」
後ろで白龍はポツリと呟いた。翼は苦笑いしたが、パルナちゃんには聞こえていないようだった。

「ねえ、きたむらー。デュエルを作った神様は単に皆に楽しんで欲しかっただけだと思うんだ。デュエルを、楽しもうよ!」
パルナちゃんは天真爛漫な笑顔でそう叫んだ。

「…デュエルを、楽しむ…か。あんたに言われるまで忘れてた感覚だぜ…。だが、オレは「traveler」だ。最強の決闘者になるのがオレの使命、オレの宿命…。勝つことだけが生きる手段だ。オレは、デュエルを楽しんじゃいけねえのさ…。」

「そんなことない!」
パルナちゃんが大きく叫んだ。
「デュエルは人を笑顔にするんだよ!デュエルを楽しんじゃいけないって、そんなの絶対おかしいよ!」

「…!」

パルナちゃんはデュエルディスクを構えた。
「きたむらーは言ったよね、デュエルに勝つことだけが生きる手段だって。でも、きたむらーはさっきデュエルに負けたけど、今ちゃんと生きてるよ!」

「…!!」

「さあ、きたむらー。ディスクを構えて!パルナとデュエルだよ!!」

その時、北村の体が透け始めた。

「わりい。どうやら時間みてえだ。」

「えっ!?」

「オレは田宮と違って強い「traveler」じゃねえ。同じ世界に留まれる時間が決まっているのさ…。」
瞬間、北村は拳を強く握った。
「けれど、オレは「traveler」の前に一人のデュエリストだ!勝負を挑まれて断る道理はねえ!だから、次にこの世界に来るときは、今よりも超絶強いデッキを引っさげてあんたに挑むぜ!約束だ。」
そう言って、北村は拳を前に突き出した。

「分かった!約束!」
パルナちゃんも拳を突き出した。二人とも笑っていた。そして、北村は次の世界へと旅立った。



「ふふ。」
白龍はパルナちゃんの頭を撫で、翼はパルナちゃんの肩をぽんっと叩いた。
「かっこ良かったですよ、パルナちゃん。」

「えへへ…。」
パルナちゃんは頬を少し赤くした。

「さあて、たみやーもきたむらーも次に来た時はもっともっーとデュエルするんだからねー!」

パルナちゃんの声が青く晴れ渡った湖の空に響いた。





パルナちゃんの決闘はこれからだ!




2016.07.19 | 未分類

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